株式会社Unimapを退職しました

4/28 をもって株式会社Unimapを退職しました.Unimap は京大マップというサービスの開発・運営を主たる目的として設立された会社 (いわゆるスタートアップ) で,2014年2月に @morishin と創業し,代表取締役を務めていました.京大マップ自体は2012年8月に開発を開始したので,このサービスに約4年8ヶ月携わっていました.この記事では,退職に至った理由とともに,京大マップというサービスのこれまでの話や,学生がサービスを開発・運営して思ったことなどを書きます.

誤解のないように前もって書いておきますが,京大マップは今後も株式会社Unimapが運営を継続します.ユーザーの皆さんには安心してサービスを利用し続けていただけると有難いです.

また,この記事は特定の団体や個人を批判する目的で書くものではありません.近しい人たちにこれまでのことを報告することと,これまでサービスを開発・運営してきた経験を書き留めることを主な目的としています.

なぜ退職するのか

自分で作っておいた会社をなぜ退職するのかを考えると,今後のキャリアを考える上で最も良い選択と感じられるからということになります.もう少し具体的な理由を以下に3つ上げます.

一つ目は経済的な問題で,現在のサービスの開発をそのまま続けても,卒業後に生活できる水準の給与を得ることが難しいということがあります.後述しますが,もともとお金を稼ぐために作った会社ではないことや,サービスの性質上簡単には多くの利益を上げることが難しいということがあります.

二つ目は技術的に学べることが少なくなっているという点です.サービス立ち上げからこれまで開発・運用を続けて行く中で,普通の大学・大学院生としてはなかなか得難い技術的な経験を多く積むことができました.しかし,サービスがある程度成熟してきた現在では,サービスの保守などが増えていることがあり,自分にとって新たな技術を身につけにくくなっています.また,サービスの性質上学び難い技術もあります.例えば,ユーザー数が高々しれている (京都大学の職員・学生全て合わせて数万人) ため,大規模なサービスを運営するための技術は身につけ難いことなどがあります.

三つ目は実際に会社を経営してみて,自分自身が会社の経営にあまり興味がなく,エンジニアリングに対する興味が強いことに気づいたことです.例えば,会社を立ち上げるとある程度サービス開発と直接関係のない雑用をする必要性がありますが,こういった作業には自分が不適なことがわかりました.また,収益化の方法を考えたりするより,既存のサービスの問題点を考え,それを技術的な力を使って解決することに強い興味を持っていることに気づきました.

京大マップのこれまで

京大マップの開発と運用の歴史をまとめておきます.自分が担当していたのが Android 版以外の開発,つまり iOS 版やバックエンド,インフラなどなのですが,一番ユーザーから見えやすい iOS 版の話が中心になります.

開発初期

京大マップはもともと2012年8月に @morishin と2人でサイバーエージェント社のアプリ開発インターン (ハッカソン) で開発したサービスです.iOS 5 に対応したアプリで,大学内の地図機能とイベントの共有機能を備えていました.これらの機能を持つアプリを作った理由は後述します.

開発期間は10日間で,前半の約5日でアプリを作成し,一晩でバックエンドを作成し,残りの期間でアプリとバックエンドとの結合と細かい部分の調整を行い,ほぼ App Store にリリースできる程度のクオリティに仕上げたところ,このインターンで優勝することができました.

このインターンに参加した理由は,10万円という学生には魅力的な報酬が提示されていたことと,iOS アプリの開発を始めようとしていたことの2点が理由でした.はじめて iOS アプリを開発した割にはなかなか良いものが出来たように感じたので,このアプリのリリースに向けて進んでいきます.

リリース

折角便利そうなアプリを作ったので広く使ってもらいたいということで,インターンの後,@morishin と個人的にアプリを App Store にリリースすることにしました.後期の始まりである 2012/10/1 に間に合わせようとしたのですが色々と手間取り,2012/10/3 のリリースになりました.はじめは Twitter や Facebook での SNS を通じてアプリの告知を行なっていました.

この頃のバックエンドサーバーには Heroku の無料プランを利用しており,かかっているコストは Apple の Developer Program の登録料のみでした.

告知と拡大

2012年11月の NF (学園祭)では,学園祭の模擬店や企画の情報を掲載するなどした上でビラを配布することで,より多くのユーザーに認知してもらうことに成功しました.この頃には Heroku では自由度が低く厳しくなっており,さくらVPSにバックエンドのサーバーを移転しています.また kyodaimap.net のドメインを取得したのもこの頃です.

2013年春には新入生が多く入る時期を迎え,アプリの利用ユーザーが増えることが見込まれました.このタイミングで新しく Android 版と Web 版の開発を行いリリースしました.Android 版は以前から要望が多くあり必要性を感じていたものでした.また,Web 版を作成することで,アプリの情報をシェアする際に canonical な URL を付けられるようになったのは良い点でした.

また,この時期の京大マップは一時的にアルバイト求人情報の掲載を行なっていました.運営を継続するための費用を稼ぐことを目的としていましたが,結果としては上手くいかずこの機能は削除されることになりました.

法人化

2013年秋頃にインターンの時にお世話になっていたアカリク(アカリクVALUATOR)の方々に声を掛けられ,法人化を検討することになりました.法人化をすることを決断した理由としては,大きく2つが挙げられます.

一つ目は個人レベルで運用を続けることの限界が見えていた点です.利益を上げていないサービスの運営に学生が個人的に支出できる費用は限られており,それがサービスの開発や運営の制約になっていました.また,卒業後もサービスを継続していくことが個人レベルでは困難なのが見えていました.

二つ目は提案された支援の方針が魅力的であったことです.学業を継続しながら,サービスの開発・運営することを前提としての支援を約束してくれました.また,直ちに収益を上げることを求められない点や,会計など経営面での支援を得られるため比較的サービス開発に集中できる環境が得られるという点がありました.

あとは起業することに興味を持っていたという点も理由として少しはあったと思います.

法人化後の運営

2014年2月に株式会社Unimapの登記が完了し,サービスを法人として運用することになりました.出資を得ることで,サービスの開発・運営の体制を大きく改善することに成功しました.例えば,開発においてはサーバーを増やしてステージング環境を整備でき,運営においてはアルバイトを雇用するなどして,サービス内の地図・イベント情報を充実させることに成功しました.

技術的な点としては,この年に発表された Swift を iOS アプリで使い始めました.Swift の採用によりアプリケーションの安定性が向上し,いわゆるクラッシュ率の低下が観測されました.Apple のイベントで Swift を採用しているアプリとしても紹介されました.

また,iOS アプリのリリースサイクルが定まり,新機能を追加しつつも安定的に運用できる体制を整えることになりました.リリースサイクルに影響するものとして,毎年秋にリリースされる iOS のメジャーアップデートと,最もアクティブユーザーが多い春の時期 (京大マップは新入生が入り,サークル等によるイベント投稿も活発になる春が最もアクティブユーザーが多い時期になります.) があります.これに合わせて,秋に大規模なアプリのアップデートを行い,春までに機能の調整や安定性の向上を行うというサイクルになりました.

サービスとしては,京大マップ運営が投稿するイベントがまだ多いものの,積極的にイベントを投稿する団体がいくつか出てきました.サービスが少しずつ認知されていくことを感じました.

個人的にはこの年の WWDC に Scholarship を取得して参加することが出来ました.これをきっかけに Apple の方からも色々と支援をいただけるようになりました.

安定した運営

2015年頃からは法人化後の様々な変化が落ち着き,比較的安定してサービスの改善に取り組むことができるようになりました.これまでは短期のアルバイトしか雇用していなかったところ,中・長期的にサービスの改善に携わってもらうインターンの募集を開始し,何人かに手伝っていただきました.

技術的にも色々と新しい取り組みがありました.まず,この年に発売された Apple Watch 向けのアプリの提供を始めました.京大マップが Watch App Store のトップページに掲載されたことが印象に残っています.(SUUMO と UBER に挟まれている図)

また,プッシュ通知機能の追加やイベントに画像を設定できる機能のリリースを行いました.イベントに画像を設定する機能については,以前から取り組みたいと思っていたものの,追加できていなかった機能でした.インターンを中心に行ったユーザー調査をもとに優先的に実装することが決まりました.

サービスとしては2015年の春の段階で,京大マップにイベントを掲載する団体が増えてきました.サービスが少しずつ回り始めたことを感じました.

この時期にある私立大学へサービスの展開を行いましたが,比較的短期間でサービスを終了しました.これは現地で運営を行いたいという学生がいたこともあり,サービスの展開をおこなったのですが,実際はあまり協力してくれることがなく,サービスとしてまともに運営することが困難になったためです.

継続的な改善から退職へ

2016年頃からこの記事の冒頭に書いたような理由から,退職について考え始めました.もちろん,この時期もサービスの開発と運営は継続的に行なっていました.

技術的な面では,なかなか上手くいっていなかったホーム画面の改善や,デザインの改善など,細かい機能の追加や改善,安定性の向上に取り組みました.

サービスとしては,2015年にリリースしたイベントの画像機能や,アプリの知名度の向上もあり,多くのユーザーがイベントを投稿してくれるようになりました.また,こちらが宣伝しなくとも,サークルの人々が新入生に京大マップを紹介している場面をなんども見かけ,正直驚いたこともありました.

退職

2017年の春に京大マップの開発・運営を新しい体制に引き継ぎ,退職することになりました.今後も京大生が主体的に運営を継続できるような環境を整えることができたため,京大マップは今後もサービスを継続できる見通しが立っています.

iOS 版のリリースはこの春までで54回を数えています.平均すると月に1回程度で,継続的にアップデートを提供することが出来ていたように思います.

また,2017年春は過去最高の数のイベント (体感ですが昨年同時期の2倍くらい?) をユーザーに投稿してもらっているようです.昨年同様,サークルの人などが京大マップを使いイベントを投稿し,またアプリの宣伝してくれており,もはや我々がアプリ自体の告知をしなくてもいいのではないかとさえ感じられました.

サービスを開発・運営して

サービスを開発・運営して得られたことや考えたこと,人によく聞かれたことについて書き残しておきます.

なぜ京大マップを開発したのか

京大マップというサービスを開発し始めた理由は,開発者自身は大学生活において不満に思った点を改善しようとしたのがきっかけです.京大は比較的面積が広い割に,教室名を独自の略称で表記することが多く,慣れないうちは迷う人も多くいます.これが地図機能を開発するに至ったきっかけです.(最近では構内に案内板が増えており少しは改善している気がします.)

イベント機能については,春の新歓時期に多くのサークルが新入生にビラをまくために長蛇の列を作って,電話帳のような厚さの量のビラを渡しているのを改善したいと考えて作成しました.ビラを受け取る側からしても興味のあるものを見つけるのは困難ですし,ビラを配布する側からしても人員や資金力で配布できる量が決まってしまうという問題がありました.また,新歓以外にも様々な勉強会などが学内で開かれており,それらの情報を集約したいと考えたのも理由の一つです.

京大マップ運営の難しさ

京大マップには前述したように地図機能とイベント機能の2つの機能があります.前者の機能はコンテンツは京大マップ運営が提供しているもので,アプリをダウンロードしてすぐに使うことができます.しかしある程度地図を把握してしまうと,利用頻度が下がる機能です.

イベント機能は基本的にユーザーが投稿したイベントを,ユーザーが閲覧できる機能です.イベントを閲覧するユーザーがいないとイベントを投稿してもらえず,逆にイベントを投稿するユーザーがいなければイベントを閲覧するユーザーが増えないという典型的な難しさがあります.

京大マップでは運営者によるイベント投稿や,イベント投稿の呼びかけなど様々な施策を行なって投稿を増やしてきました.また,時間というのもこの問題を解決してきた要因の一つで,かつて新入生の時に京大マップを使った学生が上回生になった時にイベントを投稿するユーザーに変わっていったというのもあるように思います.

イベント機能についての難しさは,他の大学にアプリを展開する上での難しさということになります.つまり,他の大学に展開してユーザーを増やすには,その大学で上記のような告知をして,サービスを育てていく必要があります.実際に上に書いたように2015年ごろに失敗しています.

大学でサービスを運営すること

京大マップの地図機能の部分は本来大学側が提供するべきもののようにも思います.海外の例になりますが,MIT では MIT Mobile というアプリが提供されていたりします.

イベント機能については大学以外が提供することにより,自由度の高いサービスが提供できていると考えています.極端な例ではありますが,利用規約に反しない範囲では大学当局の方針と相反する内容のイベントを京大マップに掲載することにはなんの問題もありません.

最近ではある時間割アプリが一部界隈をを騒がせていますが,京大マップに関しては大学当局から特に注意喚起等をされることはありませんでした.まあ,大学の ID を取得したりしているわけではないので当然ではあります.

最近の京都大学では KUINS のキャンパスICTラボで,大学関係のサービスが実験的に提供されており,大学によるサービス提供も少しずつですが進んできていると思います.キャンパスICTラボを運営している方ともお話しする機会があったのですが,理解のある方だったので大学関係のサービスを提供する場合は一度相談して見ても良いかもしれません.

学生が学生向けのサービスをやること

学生が学生向けにサービスを継続的に開発・運営するにはいくつか難しい点があると考えています.まず主観ですが,学生は責任感がないというか,あまりサービスを保守しない傾向にある気がしています.また,きちんと保守しようとしていたとしても,費用的な問題や開発者が卒業することなどにより,サービスを継続的に運営することが難しくなることが考えられます.京大マップは法人化によってこれらの問題をうまく解決できたように思います.

また,サービスを継続していくには収益を上げる必要がありますが,学生はそもそもそんなにお金を持っておらず,学生向けのサービスで学生からお金を取るビジネスはなかなか難しいと考えられます.この問題は京大マップが現時点でも解決できていない問題と言えます.

時間的な問題もあります.学生がスタートアップを立ち上げたり,スタートアップに参加する場合,休学という選択をとる人も多いと思います.実際,まともに大学や大学院に行きながら,サービスの開発・運営を行うと時間の配分等で難しい部分はありました.(プライベートの時間などほぼなかった) 休学すべきか休学しないべきかどちらが良いのかは難しいところです.同時期に休学していた人の例として友人の @ryota-ka の記事も読んでみると良いかもしれません.

人間関係

サービスを長期にわたって運営していると色々な人と接点を持つことになりました.サービスのユーザー,所謂意識高い系の学生,高給を提示してアルバイトとして引き抜こうとする人,絶対に儲かる方法を教えてくれようとする人,スタートアップ関係の人,様々な企業の人,大学の教職員,霞が関の人など,様々な人に声をかけられることがありました.正直面倒なことも何度かありましたが,全体としては色々な人と話すことができるのは良い経験になったと感じています.

また,京大マップを日々利用してくださっているユーザーの皆さんや,京大マップの開発・運営を手伝ってくださったアルバイトやインターンの皆さん,開発初期に支援してくださったサイバーエージェントの皆さん,資金面や法人化などを手伝ってくださったアカリクの皆さんにはとても感謝しています.

最後に

上にも書いたように京大マップは今後も京大生を中心に運営を続けていくことが決まっています.京大マップの運営に興味のある方は,ぜひこちらから連絡を取ってみてください.

自分自身は2018年に修士課程を修了見込になっています.残す約1年は京都で研究周りや CAMPHOR- の運営,個人の OSS 活動に主な時間を使うつもりでいます.生活費のために受託案件を多少することはあるかもしれない.修了後はどこかの企業でソフトウェアエンジニアとして働くつもりでいます.どこにいくかはまだ決めていません.

Amazon のウィッシュリストを貼るのがお約束のようなので貼っておきます.この記事を読んで何か送りたくなった稀有な人がいれば,こちらからどうぞ.

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